動物のオゾン療法について|獣医師が徹底解説!|大阪府和泉市のいぶきの動物病院2025/02/15

和泉市、堺市、岸和田市、泉大津市、和歌山県の皆さん、こんにちは!
大阪府和泉市のいぶきの動物病院、院長の島田です。
今回は、当院で新しく導入した「オゾン療法」についてご紹介します。オゾン療法は動物の健康管理や治療において注目されている方法の一つで、幅広い症状や疾患に対応できる可能性を秘めています。本記事では、オゾン療法の基本から作用機序、メリット・デメリット、具体的な適応症や治療法について、わかりやすく解説していきます!
1. オゾン(O₃)とは
オゾンは酸素(O₂)から生成される特殊な分子(O₃)です。大気中のオゾンは「オゾン層」として紫外線を吸収する役割を果たしています。オゾン分子は強い酸化力を持ち、その特性から医療分野でも活用されています。
医療用オゾンは特別な機器を使用して精製され、適切な濃度で使用されます。この医療用オゾンがオゾン療法で使われるもので、人体や動物への安全性が確保されたものです。
※当院ではTAMAX社の最新型「OZONE-VⅡ」を導入しています。
2. オゾン療法とは
オゾン療法とは、オゾンガスの特性を利用して動物の体調を整えたり、病気の治療を補助したりする治療法です。具体的には、オゾンを直接体内に取り入れたり、皮膚や患部に適用したりすることで治療効果を発揮します。
主なオゾン療法の種類
• 注腸法:直腸からオゾンを注入する方法で、全身に作用します。
• 外用法:傷口や皮膚病変部にオゾン水やオゾンオイルを塗布します。
• 静脈法(オートヘモセラピー):採血した血液をオゾンで処理し、再び体内に戻します。
• 吸入法:特定の呼吸器疾患に使用されますが、注意が必要です。
当院では特に、負担が少なく安全性の高い「注腸法」を中心に実施しています。
3. オゾン療法の作用機序
オゾン療法の効果は主に次のような作用に基づいています。
1. 抗菌・抗ウイルス作用
オゾンは細菌やウイルス、真菌に直接作用し、病原体を破壊します。そのため、感染症治療の補助として有効です。(猫ヘルペスウイルス、FIPなど。)
2. 抗炎症作用
炎症を抑える効果があり、関節炎や皮膚病など炎症が関与する疾患の改善に役立ちます。
3. 免疫調整作用
免疫系の過剰な反応を抑えたり、逆に免疫力を高めたりする作用があります。アレルギーや自己免疫疾患に適しています。
4. 酸素供給能力の向上
オゾンは赤血球の酸素運搬能力を向上させ、全身の細胞が酸素を効率よく利用できるようにします。これにより、疲労回復や慢性腎臓病など慢性疾患の改善が期待できます。
4. 適応症
オゾン療法はさまざまな疾患や症状に適応します。以下は主な例です:
内科疾患
• 慢性腎疾患
• 糖尿病性症状
• 肝疾患
感染症
• 皮膚感染症(細菌性、真菌性)
• 外耳炎
• 傷口の感染
整形外科疾患
• 関節炎
• 筋肉の損傷や炎症
その他
• 免疫力低下に伴う体調不良
• 慢性疲労
• がんの補助療法
5. メリット、デメリット
メリット
1. 低侵襲:体への負担が少ないため、高齢の動物や体力のない動物にも使用できます。
2. 副作用が少ない:適切な濃度と方法で使用すれば、安全性が高いです。
3. 幅広い適応症:感染症から慢性疾患、さらには予防医療まで対応可能です。
デメリット
1. 効果の個体差:すべての動物に同じ効果が得られるわけではありません。
2. 継続が必要:1回の施術で劇的な改善は難しく、継続的な治療が必要です。
3. 費用:新しい治療法のため、従来の治療法に比べて費用が高くなることがあります。
6. 禁忌
オゾン療法は安全性が高い治療法ですが、以下のような場合には慎重に判断する必要があります:
• 重度の貧血:血液に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
• 甲状腺機能亢進症:代謝が過剰に亢進している場合、悪化するリスクがあります。
• 妊娠中の動物:胎児への影響が十分に確認されていないため避けるのが無難です。
7. 実際(注腸法を中心に)
当院で行っている『オゾン注腸法』について詳しく説明します。
手順
1. 動物の直腸にカテーテルを挿入します。
2. 適切な濃度のオゾンガスを注入します。(おしりから体温を測るのと近いイメージです。)
3. 数分間待機し、ガスを吸収させます。
注腸法は痛みを伴わず、動物にとって負担が少ないのが特徴です。また、腸から吸収されたオゾンが全身に広がり、慢性疾患、腫瘍(がん)、食欲不振、体力低下、加齢による不調(アンチエイジング)などに効果を発揮します。
8. 最後に
オゾン療法は、従来の治療を補完する新しい選択肢として注目されています。当院では、飼い主様とご相談しながら、既存の治療法と組み合わせ、動物たちにとって最適な治療を提案してまいります。
気になる点や質問がございましたら、お気軽にいぶきの動物病院までご相談ください!
動物たちの健康を全力でサポートいたします。
参考文献
1. Bocci, V. (2005). Ozone: A New Medical Drug. Springer.
2. Elvis, A. M., & Ekta, J. S. (2011). “Ozone therapy: A clinical review”. Journal of Natural Science, Biology and Medicine.
3. Díaz-López, C., et al. (2018). “Therapeutic effects of ozone therapy in animals”. Veterinary Medicine International.
4. Schwartz, A. (2009). Medical Ozone Therapy: An Overview.
5. Ripamonti, C., et al. (2016). “Use of ozone therapy in veterinary medicine”. Open Veterinary Journal.