動物のがん治療における新たな選択肢:電気化学療法(ECT)について|獣医師が徹底解説!|大阪府和泉市のいぶきの動物病院

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動物のがん治療における新たな選択肢:電気化学療法(ECT)について|獣医師が徹底解説!|大阪府和泉市のいぶきの動物病院2024/12/13

和歌山県、大阪府、和泉市、堺市、岸和田市、泉大津市の皆さん、こんにちは!

大阪府和泉市のいぶきの動物病院です。

本日は、犬や猫、さらにはウサギやフェレットなどエキゾチックペットの治療にも応用可能な「電気化学療法(ECT)」について詳しくご紹介します。この革新的な治療法は、抗がん剤の効果を飛躍的に高めることが可能で、特に手術や放射線療法が難しいケースで注目されています。

最近、米国や日本でも注目されていますが、ヨーロッパでは歴史ある治療法です。

いぶきの動物病院では、「動物に優しい治療を行うため」比較的低侵襲で実施できる治療として 電気化学療法を積極的に実施しています。今回はその詳細について紹介させて頂きます。

 

1.電気化学療法(ECT)とは?その流れや機序

ECTは、抗がん剤と電気パルスを組み合わせた治療法です。

この治療法の流れや機序は以下の通りです:

1. 抗がん剤の投与

静脈と腫瘍部位に低用量の抗がん剤を投与します。主に使用されるのは以下の2種類です:

ブレオマイシン:がん細胞のDNAを損傷させる細胞毒性が高い薬剤です。(主に静脈注射)

シスプラチン:細胞分裂を阻害する薬剤で、特に硬い腫瘍にも効果的です。(主に局所注射)

※使用する投与量は、通常の化学療法の数分の1以下で済みます。

2. 電気パルスの適用(専用の機器を使用します。)

特殊な電極を腫瘍部位に設置し、短時間の電気パルスを与えます。

電圧:800~1000V/cmの高電圧を使用。

パルス時間:100マイクロ秒(0.0001秒)程度。

電気はプローブの間のみに流れます

3. エレクトロポレーションの発生

電気パルスによって腫瘍細胞膜に一時的かつ可逆的な穴(ポア)が形成されます。

この現象を「エレクトロポレーション」と呼びます。文末のYouTube動画もご参照ください。

4. 抗がん剤の取り込みと効果増強

細胞膜に形成されたポアを通じて抗がん剤ががん細胞内に大量に取り込まれ、通常の数倍から最大1000倍に効果が増強されます。(ブレオマイシンでは約700倍)これにより、がん細胞が効率的に破壊されます。

 

2.電気化学療法(ECT)のメリット

低侵襲性

手術に比べて体への負担が少なく、高齢動物や持病のあるペットにも適用可能です。

顔面腫瘍では、目や耳などの臓器の摘出を回避できる場合があります。(臓器の温存)

副作用が少ない

抗がん剤の投与量は通常の化学療法に比べて少ないため、全身への影響が軽微です。麻酔も手術や放射線治療より短くて済みます。(通常20-30分で終了します。)

幅広い適用

多くの表在性の腫瘍(皮膚腫瘍や皮下腫瘍)の顕微鏡的病変と一部の腫瘍の肉眼病変の治療に効果的です。

顕微鏡病変の治療(手術で十分なマージンが確保できない場合など)は多くの腫瘍に適応可能ですが、主に以下の腫瘍に適応されます:

•注射部位肉腫(主に猫)

軟部組織肉腫

肥満細胞腫:特に不完全切除(あるいは辺縁部切除となった場合に有効です。)

短時間治療

1回の治療は短時間(約20-30分)で完了します。(通常2-4週ごとに2-6回実施しています。)

 

3.適応可能な腫瘍と不向きな腫瘍

1.適応可能な腫瘍

皮膚および皮下の腫瘍、口腔内の腫瘍:メラノーマ、扁平上皮がん、肥満細胞腫、棘細胞性エナメル上皮腫、肛門嚢アポクリン腺癌など。

(鼻鏡、目の近くなど顔面に発生した扁平上皮癌に対しては非常に有効です。)

外科手術が困難な腫瘍:顔や四肢に発生した腫瘍、鼻腔内の腫瘍(特殊な電極を用います。)

再発性腫瘍:切除後の再発腫瘍に対する追加治療として行います。

2.不向きな腫瘍

深部腫瘍には不向きです。

電気パルスが深部まで届きにくいため、ECTは表在性の腫瘍に限定されます。

 

4.エキゾチックペットにおける電気化学療法(ECT)

ウサギやフェレットなどのエキゾチックペットでも、皮膚や皮下腫瘍に対してECTが応用されています。ウサギでは皮膚腫瘍のほか、小さいものなら乳腺腫瘍にも応用可能とされています。

当院では、ウサギの悪性黒色腫、ハリネズミの口腔内の扁平上皮癌などに実施しています。

ただし、エキゾチックペットでは以下の点に注意が必要です:

麻酔管理

小型動物は麻酔リスクが高いため、犬猫以上に慎重な管理が求められます。

治療後のケア

犬猫と同様ですが、治療部位の炎症やびらんが発生する場合があり、適切なケアが必要です。

 静脈注射が困難

体格により静脈注射が困難な場合があります、その際は、別の投与法を実施します。

 

5.電気化学療法(ECT)のデメリット

治療時に原則は、全身麻酔が必要なため、高リスクの動物では注意が必要です。

一時的な局所反応(治療部位の腫れや疼痛、発赤、皮膚びらん稀に壊死)が発生する可能性があります。

深部の腫瘍や転移性腫瘍には効果が限定的です。

 根治の保証はない。

単独では腫瘍を完全に除去できない場合もあり、外科手術や放射線療法、化学療法との併用が推奨されます。(一部根治されたと考えられる報告があります。今後の研究を期待するところです。)

 

6.まとめ

電気化学療法(ECT)は、新しい選択肢として期待される治療法です。手術や放射線療法が難しいケースや、ペットの全身状態が悪い場合でも比較的安全に適用できます。しかし、すべての腫瘍や症例に適しているわけではありません。治療を検討される際は、獣医師と十分に相談し、最適な治療法を選択することが重要です。

当院では、診察料、電気化学療法、全身麻酔、静脈内留置、当日の静脈内点滴、静脈内ブレオマイシン、シスプラチン局所注射及び抗がん剤の管理料などを含め『およそ9万円前後』で実施しております。(動物種、体格、部位により異なる可能性があるため詳しくは担当医とご相談下さい。)

また、電気化学療法に関する、セカンドオピニオンや近隣の先生方からの紹介も受け入れしております。

是非ご相談ください。

 

7.参考文献

1. Mir, L. M., & Orlowski, S. (1999). Mechanisms of electrochemotherapy. Advanced Drug Delivery Reviews, 35(1), 107–118.

2. Spugnini, E. P., & Porrello, A. (2003). Electroporation‐mediated electrochemotherapy of spontaneous tumors in dogs and cats. Journal of Molecular Medicine, 81(12), 766–774.

3. Tozon, N., et al. (2001). Effective treatment of perianal tumors in dogs with electrochemotherapy. Anticancer Research, 21(2A), 843–848.

 

8.参考動画

※英語になりますが、Leroy Biotech社のYouTube動画を以下にご紹介させていただきます。

是非、参考にしてください。

 

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