和泉市、堺市、岸和田市の皆さん、こんにちは!
大阪府和泉市のいぶきの動物病院です。最近、朝と夜はもう冬が来たのかと思うほど寒く、お昼間はまだ半袖でも過ごせたり温度差が激しいですが、
飼い主さん、ペットちゃんいかがお過ごしでしょうか。
今回は、多くの犬にみられる心臓の病気「僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Valve Insufficiency)」について詳しくお話しします。
この病気は進行すると重篤な症状を引き起こす可能性がありますが、早めに気づいて適切な治療を行えば進行を遅らせ、愛犬の生活の質を保つことができます。
それでは、原因や症状、診断、治療について順に見ていきましょう。
1.原因
僧帽弁閉鎖不全症は、犬の心臓の左側にある僧帽弁が正常に機能しなくなる病気です。僧帽弁は、心臓内で血液が逆流しないように弁の役割を果たしていますが、この弁が加齢等の様々な原因で変形することで、閉鎖不全を引き起こします。
その結果、異常血流が生じ心臓に負担がかかってしまいます。
主な原因
・加齢: 僧帽弁閉鎖不全症は、主に中高齢の犬に発症することが多く、加齢による弁の変性(粘液腫様変性)が一般的な原因です。特に小型犬種に多く見られます。
・遺伝的要因: 一部の犬種、特にキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルやプードル、チワワなどの犬種は、僧帽弁閉鎖不全症になりやすい傾向があります。
・感染や外傷: 僧帽弁に炎症が起こる心内膜炎や、外傷によって弁が損傷した場合も僧帽弁閉鎖不全症の原因になります。
・その他の疾患: 高血圧や心臓に負担がかかる疾患も、弁の機能を低下させる原因となります。
2.症状
僧帽弁閉鎖不全症の症状は、病気の進行具合によって異なります。初期段階では目立った症状が出ないこともありますが、病気が進行するにつれて以下のような症状が見られることがあります。
初期の症状
・軽度の咳: 特に運動後や夜間に咳が見られることがあります。これは僧帽弁閉鎖不全症により大きくなった心臓が呼吸器官(気管支)を圧迫してしまうためです。
・運動への不耐性: 犬が散歩や遊びをあまりしたがらない、すぐに疲れてしまうなど、以前より活動量が減ることがあります。
中期、進行した症状
・呼吸困難: 進行すると、犬が呼吸困難を示すことがあります。浅く速い呼吸が見られることが多いです。
・体重減少: 病気の進行とともに食欲が落ち、体重が減少することがあります。
・胸水、腹水やむくみ: 心臓の機能が大きく低下することで、体に水分がたまり、胸部や腹部に水が溜まったり、四肢にむくみが見られることがあります。
重篤な症状
・失神:心不全が進行すると、血液の循環が悪くなり、突然失神することがあります。
・肺水腫: 心臓のポンプ機能が低下することで、全身に送り出せなくなった血液が肺に溜まる「肺水腫」を引き起こすことがあります。これは命に関わる状態で、早急な治療が必要です。
3.診断の流れ
僧帽弁閉鎖不全症を疑った場合、動物病院での診断が必要です。診断は、いくつかのステップを経て行われます。
1. 問診
飼い主様から、犬の行動や症状について詳しくお聞きします。咳がどのような状況で出るか、呼吸の様子、食欲や運動量の変化、最近の体調など、具体的な情報が診断の助けとなります。
2. 身体検査
聴診器を使って、心臓の音を確認します。僧帽弁閉鎖不全症の場合、心雑音が聞こえることが多いです。心雑音は、血液が逆流している際に生じる音です。
3. 胸部X線検査
X線撮影を行い、心臓の大きさや形、肺の状態を確認します。心臓が大きくなっていたり、肺に水分が溜まっている場合、僧帽弁閉鎖不全症の進行が疑われます。
4. 心エコー検査(超音波検査)
心エコーは、心臓の弁や血液の流れを直接観察するための検査です。僧帽弁の形や動きの異常、血流の異常がないかを確認できます。
5. 血液検査
心臓の負担を評価するために、「心臓バイオマーカー」というものを調べる事ができます。
値が高ければ僧帽弁閉鎖不全症を疑い、より詳しい検査を行っていきます。
4.治療の流れ
僧帽弁閉鎖不全症の治療は、症状の重さや進行度に応じて異なります。根本的に僧帽弁の異常を治すためには外科手術が必要です。内科的な治療の場合は、薬物療法や食事の管理を行います。
1. 薬物療法
•ACE阻害薬: 血管を広げる薬で、心臓の負担を軽減します。血液の流れを改善し、心臓のポンプ機能を補助します。
•利尿薬: 体内に溜まった余分な水分を排出し、肺や腹部に水が溜まるのを防ぎます。特に肺水腫の予防に重要です。
•強心薬: 心臓の収縮力を高め、血液を効率よく送り出すために使われます。
2. 外科手術
重度の僧帽弁閉鎖不全症に対しては、外科的な治療が検討されることもあります。僧帽弁を修復する手術が可能ですが、リスクも伴うため、専門の獣医師との相談が必要です。
3. 生活管理
•運動制限: 心臓に負担がかかるため、無理な運動を避け、散歩なども適度に抑えることが推奨されます。
•体重管理: 適切な体重を維持することで、心臓への負担を軽減できます。肥満は心臓病を悪化させる要因になるため、食事の管理も重要です。
・食事管理:僧帽弁閉鎖不全症で不足しやすい栄養素や、制限すべき栄養があり、これらが調整されている療法食が推奨されます。
5.予防方法
僧帽弁閉鎖不全症の予防は難しいですが、いくつかの方法で病気の進行を遅らせたり、早期発見が可能です。
•定期的な健康診断: 特に中高齢の犬やリスクの高い犬種は、定期的に動物病院での健康チェックを受けることが大切です。心雑音が早期に発見されれば、進行を遅らせるための対策が取れます。
•適度な運動と栄養管理: 無理のない範囲での運動と、バランスの取れた食事は、心臓の健康を維持するために重要です。特に肥満は心臓に大きな負担をかけるため、体重管理には気を配りましょう。
•ストレスを避ける: 過度なストレスや緊張は、心臓に負担をかける要因となります。犬がリラックスして過ごせる環境作りも心臓病予防には有効です。
・心臓に配慮したサプリメント: 獣医師の指導のもと、心臓の健康をサポートするサプリメントを取り入れることも考慮できます。タウリンやカルニチンなどの成分が、心臓の機能をサポートする効果があるとされています。
6.最後に
僧帽弁閉鎖不全症は、多くの犬が直面する可能性のある病気ですが、早期発見と適切な治療により、病気の進行を遅らせ、愛犬の生活の質を維持することが可能です。特に心雑音が聞こえたり、咳や呼吸困難などの症状が見られた場合は、できるだけ早く動物病院で診察を受けることをお勧めします。
いぶきの動物病院では、皆様の大切な家族の健康を守りために全力でサポートさせていただきます。
何か気になることがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。