犬の外耳炎の原因や症状、治療方法について|獣医師が解説|和泉市のいぶきの動物病院2023/08/11
耳垢検査
和泉市、堺市、岸和田市、泉大津市、高石市の皆さんこんにちは。和泉市のいぶきの動物病院です。今回は、犬の外耳炎の原因や症状、治療方法について解説をいたします。
犬の耳の汚れや臭いって病気?
耳垢が多く、臭いのする耳は何らかのトラブルが起きている可能性があります。ワンちゃんの耳は本来が皮膚の延長であるため、目立つ汚れはなく明らかな臭いはしません。ペットショップさんやブリーダーさんの所にいる生後数か月の子犬をイメージしていただけると分かりやすいかと思います。皮膚は薄く、キレイな表面で赤みなどもありません。耳垢も多少は付着しますが、臭いまではしないことが一般的です。汚れや臭いの原因として最も多いものが外耳炎です。
犬の外耳炎とは?
ワンちゃんの外耳炎は動物病院では日常的によくある病気の一つです。症状としては多量の耳垢が出る、耳が痒いため掻いたりこすったり頭を振ったりする、耳の皮膚が赤くなって腫れる、耳から出血するなどがあります。ワンちゃん本人にとってストレスになっていることが多く、治療が必要とされます。外耳炎はいくつかの原因が複合して悪化していると考えられており、それぞれの原因を出来る限り除去する必要があります。
犬の外耳炎の原因は?
外耳炎の悪化の原因として最も多いのが、細菌やカビの感染です。その場合、耳から独特のにおいがする場合があります。外耳炎になる直接的なきっかけとして多いのが耳に入ってしまった植物の種やゴミ(異物)、ダニやノミなどの寄生虫、アレルギー性皮膚炎、水が入ってしまった、耳掃除で傷ついた場合などです。他にも、脂漏症などの体質や耳の中に毛が多いことや耳の穴が狭いこと、垂れ耳なことなどの身体的要因が外耳炎の原因になる場合があります。
犬の外耳炎になりやすい犬種は?
アレルギー性皮膚炎になりやすい犬種(柴犬、パグ、フレンチ・ブルドッグなど)に加えて、シー・ズー、ミニチュア・ダックスフンド、ゴールデン・レトリバー、マルチーズ、アメリカン・コッカー・スパニエルなど脂漏症になりやすい犬種や、耳垢が多い犬種は外耳炎になりやすいといわれています。特に垂れ耳の犬種と短頭種(パグ、フレンチ・ブルドッグなど)は注意が必要です。垂れ耳は湿気がこもってしまい、悪化する傾向があります。また、短頭種は耳の形が独特で、耳の穴が狭くなっている子が多いです。この様な場合、過剰に耳垢が蓄積してしまったり、液体が貯留し細菌やカビが繁殖しやすくなってしまったりする場合があります。
犬の外耳炎の検査法は?
身体検査を行います。耳鏡などを活用し耳の入り口から覗き込み、肥厚や狭窄、熱感や赤みの有無、耳垢の色や量鼓膜の状態を確認し、片方の耳に生じたのか両方の耳に生じたのかを確認します。片方の耳に生じた場合は、何らかの異物の混入や水の貯留、外傷、寄生虫症、腫瘍の関連を確認します。他にも耳周囲のリンパの異常を確認し神経症状の有無を確認します。また、耳垢検査も行われます。耳垢検査は感染症(カビ、細菌、ミミダニ)が関与しているかを見極めるために重要です。適切な耳のお薬を処方するための助けとなります。難治性の場合は細菌培養検査、アレルギー検査、ホルモン検査など精査に必要な検査をしていきます。
犬の外耳炎の治療法は?
①洗浄
まずは洗浄です。外耳炎の治療において洗浄は非常に重要です。外耳炎になっている耳の穴には無数の細菌やカビが生息しています。それらは台所や風呂場の排水溝に見られるぬめりを作り出します。このぬめりはバイオフィルムといわれています。バイオフィルムによって細菌は自身を守り、抗生剤に対する耐性を獲得します。したがって、抗生剤や抗真菌薬(抗カビ薬)を使用する前に専用の洗浄液で丁寧に洗浄し、物理的にバイオフィルムを破壊する必要があります。また、定期的に耳の洗浄を行い、バイオフィルムを形成する前にきれいにすると外耳炎を予防しやすくなります。
洗浄の方法は、犬猫専用の耳洗浄液を用いて行うことがお勧めです。炎症が比較的軽度で、自浄作用が期待できる場合はコットンなどに耳洗浄液を付けて見える範囲を優しく拭きます。外耳炎が中程度以上で鼓膜の破損がないと考えられる場合は、耳洗浄液を耳に入れもみ洗いを行います。しかし、中程度以上の場合は点耳薬などを併用する必要がある場合が多く、診察が必要となります。
犬の外耳炎の治療法は?
②お薬
治療には点耳薬、内服薬の投与を行います。耳の穴に入れて使うお薬を点耳薬といいます。毎日お家でして頂くものや一度病院で使うと一定期間効き続けるタイプのものもあります。点耳薬には抗生剤や抗真菌薬、炎症を抑えるステロイド剤が配合されています。診察を受け耳垢検査などの検査を行い耳の状態に適したものを使っていく必要があります。使っていく期間は耳の状態を定期的に診察することで決定します。漫然と使用していると多剤耐性菌の出現や、ステロイド皮膚症になることがあるため、使用期間の判断は重要です。外耳炎の程度、ワンちゃんの性格によっては内服薬を服用し治療にあたることがあります。
また、再発の多い病気でもあるため、治療完了の確認や、定期的なチェックも重要です。
まとめ
外耳炎はワンちゃんで比較的多い病気です。高温多湿の時期には特に多くみられます。
命を脅かすことはほとんどありませんが、ずっと痒い(痛い)という不快感はワンちゃんの生活の質を落とすことになります。動物病院で治療を行い、ワンちゃんにとって気持ちいいお耳を目指しましょう。