犬の心不全の原因や症状、診断や治療法|獣医師が徹底解説!|大阪府和泉市のいぶきの動物病院2024/10/20

和泉市、堺市、岸和田市の皆さん、こんにちは!
大阪府和泉市のいぶきの動物病院です。今回は、犬の心不全に関する原因や症状、診断、治療について詳しくご紹介します。
1.原因
犬の心不全は、心臓が正常に機能しなくなる状態を指します。心臓は血液を全身に送り出す重要な臓器ですが、その機能が低下することで全身に必要な酸素や栄養を供給できなくなります。心不全の原因は大きく分けて先天性と後天性のものがあります。
先天性の原因
先天性の場合、子犬の頃から心臓の異常が見られることがあります。特に以下のような疾患が原因となることが多いです。
• 動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう):生後1週間ほどで閉鎖するはずの大動脈と肺動脈をつなぐ動脈管が残存する疾患
• 心室中隔欠損症(しんしつちゅうかくけっそんしょう):左右の心室を分ける壁に穴が開くことにより血液の流れに不具合が生じる疾患
後天性の原因
成長してから発症する場合は、主に生活習慣や年齢、他の疾患が影響します。以下が代表的な後天性の原因です。
• 僧帽弁閉鎖不全症 : 小型犬を中心に最も多い心臓病で、僧帽弁が加齢などにより変性して完全に閉じないため、血液が逆流してしまう疾患です。
また二次的に三尖弁閉鎖不全症や肺高血圧症を引き起こすこともあります。
肥満も悪化の原因になります。
• 感染症:心臓の内膜に感染が起こる「感染性心内膜炎」など、感染症が原因で心不全が進行することもあります。
• 腫瘍:心臓周辺に腫瘍が発生し、心臓の働きを妨げるケースも見られます。
2.症状
心不全の症状は、進行度によって異なります。初期には症状がわかりにくいことも多いですが、以下のようなサインが見られた場合は早めに動物病院で診察を受けましょう。
• 呼吸困難:息が荒くなる、浅い呼吸が増える、呼吸回数が異常に増えるなどの症状が見られます。
• 咳:特に夜間や朝方に頻繁に咳をする場合、心不全が疑われます。
• 疲れやすい:以前は元気に走り回っていたのに、散歩中にすぐに疲れてしまうようになった場合も心不全の兆候の可能性があります。
• 食欲不振:心臓の機能が低下すると、全身の血液循環が悪くなるため、食欲が減退することがあります。
• むくみ:心臓の働きが悪くなると、血液の循環が悪くなり、手足や腹部にむくみが生じることがあります。
これらの症状が進行すると、より深刻な合併症が発生することもあるため、早期発見・早期治療が重要です。
3.診断の流れ
心不全の診断には、以下の検査が行われることが一般的です。
・問診
飼い主様から症状の経過を詳しくお伺いします。
呼吸の状態、いつどんな時に悪化するのか、咳はいつするのか、食欲、元気、排便、排尿などの生活状況も詳しく聞かせていただきます。
また、飼い主さまの気になることなどどんな些細なことでも構いませんので
教えてください。
・身体検査
胸部の聴診を行います。
心拍数、心雑音の有無、呼吸音など詳しく評価します。
体重や体温、脱水の有無もチェックします。
・レントゲン検査
胸部レントゲンを撮影し、心臓の大きさや肺の状態を確認します。心臓が拡大している場合や肺に水が溜まっている場合は、入院なども必要になることがあります。
・心エコー検査
心臓の超音波検査では、レントゲン検査ではわからない、心臓の形や動きを詳しく観察することができます。この検査では、心臓の弁が正常に機能しているか、心臓の収縮率や血液の流れがスムーズかどうかを確認できます。
・血液検査
心不全の原因となる感染症や、他の内臓疾患がないかを調べるために血液検査を行います。また、心臓に関連する特定のマーカーを測定することで、病気の診断の補助になることがあります。
4.治療の流れ
検査結果に基づいて症状の重さや原因に応じた治療を選択していきます。
主に、薬物療法や生活管理を通じて症状の進行を緩やかにして、犬の生活の質を向上させることを目指します。
・薬物療法
心不全の治療で最も一般的なのは薬物療法です。以下のような薬が使用されます。
• 利尿剤:心不全に伴うむくみや肺水腫を改善するために、体内の余分な水分を排出する薬。
• 血管拡張薬:血管を広げて血液の流れを改善し、心臓への負担を軽減します。
• 強心薬:心臓の収縮力を強めることで、全身に効率よく血液を送り出すことをサポートします。
その他にも、症状や状態に合わせて必要なお薬を処方します。
・食事療法
心臓に負担をかけないための食事管理も重要です。塩分を控えた食事や、心臓の機能をサポートする成分を含む療法食が推奨されます。
・生活管理
運動の制限やストレスを避けることが、心不全の悪化を防ぐために重要です。過度な運動を避け、リラックスした生活環境を整えることが求められます。また、定期的な動物病院での検査や診察も大切です。
5.予防方法
心不全の予防には、日常のケアと病院での定期健診が非常に重要です。特に次の点に気を付けることで、心臓への負担を減らし、病気のリスクを低減できます。
• 適切な体重管理:肥満は心臓に大きな負担をかけます。適正体重を保つことは、心不全の予防にとても効果的です。
• 定期的な健康診断:心不全は進行が遅いことが多いため、早期発見が重要となります。定期的な画像検査や血液検査で心臓の状態をチェックしましょう。当院では心臓の検診や循環器の専門家の検診(完全予約制)も行っておりますのでご相談ください。
• バランスの取れた食事:適切な栄養を摂ることで、心臓の健康を保つことができます。心臓に良い成分を配合したフードもございますので、いつでもご相談ください。
6.最後に
犬の心不全は、早期発見、早期治療することで生活の質を向上させることができます。飼い主様としては、愛犬の日々の様子をよく観察し、異常を感じたらすぐに動物病院を受診することが大切です。心臓病の予防には定期検診と日常的なケアが欠かせません。
いぶきの動物病院では心不全に限らずさまざまな心疾患に対する診断や治療に力を入れています。
愛犬の健康に不安がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
定期的な検診や早めの対策で、大切な家族である愛犬の健康を守っていきましょう。
これからも皆さまのペットが健やかに過ごせるようサポートしていきます。