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犬猫の全身麻酔とリスク2024/06/09

大阪府和泉市、堺市、大阪市、岸和田市、泉大津市の皆さまこんにちは。

大阪府和泉市のいぶきの動物病院、獣医師の河本です。

 

今回は犬・猫の全身麻酔とそのリスクについて解説いたします。

 

1.全身麻酔とは?

薬物を投与することによって中枢神経系の活動を抑え、痛みや不安などの感覚を人為的に取り除くことをいいます。

全身麻酔では中枢神経系の活動を抑えることで、

➀ 鎮静、催眠作用(眠くなる、不安が和らぐ)

➁ 鎮痛作用

➂ 筋肉の弛緩

➃ 有害反射の抑制(自律神経の活性化等を抑える)

といった4つの作用をもたらします。

これにより動物の肉体的・精神的な負担を軽減します。

全身麻酔を行うことで動物にとって負担の大きい検査や手術を行うとき、

必要な処置を安全に実施できる

不安や痛みから引き起こされる副作用を防ぐことが出来る 等のメリットがあります。

 

2.全身麻酔のリスクについて  

動物に全身麻酔をするにあたって、どうしてもリスクは伴います。

健康なわんちゃんでも麻酔関連の死亡リスクは0.05%、つまり約2000頭に1頭は全身麻酔で亡くなっています。

健康な猫ちゃんの場合は0.11%、つまり約1000頭に1頭は全身麻酔で亡くなっています。

基礎疾患があったり、老齢の場合のリスクはさらに上がります。

では、全身麻酔による副作用はどんなものがあるのでしょうか?

犬猫の全身麻酔の副作用は以下のようなものがあります。

・急性の心不全

・急性の腎不全

・呼吸器系の異常

・神経系の異常

・低血圧や低体温

・薬剤によるアナフィラキシーショック

こうした副作用の多くは、事前検査や麻酔中の適切な管理により防ぐことが出来ます

 

3.全身麻酔の流れは?

① 事前検査

全身麻酔にはリスクが伴うので、事前に血液検査や必要に応じて画像検査(レントゲン検査やエコー検査)、心電図検査を行います。

 

血液検査

内臓(肝臓や腎臓)の機能や電解質バランス、貧血がないか等を確認します。肝臓や腎臓の数値に異常があったり貧血がある場合は麻酔リスクに大きく関わるので、手術を延期して治療を優先することもあります。

 

レントゲン検査

心臓や肺、お腹の臓器に明らかな異常がないか検査します。

 

エコー検査

異常が疑われる部位の詳細な検査を目的に実施することがあります。

 

心電図検査

問診や身体検査、レントゲン検査等で心疾患を疑った場合に行うことがあります。 主な目的は不整脈の検出です。 全身の状態をしっかり確認することで、リスク回避を行っていきます。

 

② 前日・当日の準備

夜ご飯は前日まで、当日は飲水も控えて「絶食・絶水」状態で手術を迎えます。

全身麻酔の影響で嘔吐をすることがあるので、嘔吐による誤嚥を防ぐためです。

当日に最終の身体検査をして特に問題がなければお預かりします。

 

③ 導入

検査や手術のためにお預かりし、麻酔をかけていく段階です。この麻酔をかけていく最初の流れを「導入」といいます。導入は留置・投薬からはじまり、気管挿管を行っていきます。

 

留置

まず、必要な薬剤を投与するために血管に投薬用の細い静脈用カテーテルを設置します。この処置を「留置」といいます。 薬剤の投与 留置から、注射用麻酔薬を入れます。他にも、鎮痛薬や不安を和らげるための鎮静薬、手術による感染を予防する為の抗菌薬を投与します。

 

気管挿管

導入麻酔が効き始めたら、気管挿管をし呼吸の道を確保します。この時点で、麻酔を吸入麻酔に切り替え麻酔状態の維持、人工呼吸器も使用して呼吸の管理をします。

 

④ 麻酔中の管理

麻酔中は、検査や手術を行う処置者とは別に、麻酔担当者が付きます。

心拍数や呼吸状態、血圧、体温、粘膜の色など体の重要な機能を麻酔担当者がしっかり記録し、異常がある場合はすぐに適切な処置を行います。

また、麻酔担当者は動物の麻酔がかかりすぎていないか、逆に浅すぎて痛みを感じてないか等も評価します。

麻酔担当者を配置することで、麻酔中の動物の異変にいち早く気付けるようにしています。

麻酔中に行う処置の例としては以下のようなものがあります。

・循環状態の管理  

麻酔中は、過水和や脱水状態を防ぎ適切な循環状態を保つことが大切です。点滴や昇圧剤を必要に応じて使用します。当院では、ドパミンやアトロピン、エフェドリンと複数種類の昇圧剤を状況に応じて使い分けることで適切な循環状態を維持しています。

 

・痛みの反応  

手術による侵襲が強い場合、追加の鎮痛薬を用いる場合もあります。事前に侵襲が強い手術と分かっている場合は局所麻酔薬を併用したり、手術中に特に痛みが強いタイミングでメデトミジンという鎮痛薬を併用することで痛みの軽減に努めています。

 

・低体温症  

麻酔中は体温調節機能が低下するので低体温症になりやすいです。低体温症は麻酔からの覚醒遅延や副作用の発現につながります。加温することで適切な体温の維持に努めます。

 

・呼吸管理  

麻酔中は呼吸中枢の働きが抑制されるので、必要に応じて人工呼吸器での管理が必要になります。

 

⑤ 覚醒

必要な検査や手術が終了したら、吸入麻酔薬の使用を終了し、酸素下で少しずつ目が覚めるのを待ちます。自分で呼吸できる状態になったのを確認して抜管し、意識がはっきりしてきたらお部屋に戻します。その後もしばらく獣医師や動物看護士が動物の状態を注意深くチェックします。

 

⑥ ご自宅でのアフターケア

手術後は、動物は慣れない出来事の連続で疲れています。お家でゆっくり休ませてあげましょう。穏やかな声掛けや優しく触れ合って動物を安心させてあげてください。   

麻酔後は消化器系が敏感になっていることが多いので、手術当日の夜ごはんは控えましょう。

どうしても欲しそうにしている場合は少量からあげましょう。手術や検査内容に合わせてご自宅で気を付ける内容が変わってきます。獣医師から具体的なケア内容の指示がありますので、獣医師の指示に従いましょう。

 

4.当院でのより安全性を高めるための取り組み

当院では全身麻酔の安全性を少しでも高める為に以下のような取り組みを行っています。

 

① 事前検査の徹底

前述させて頂きましたが、血液検査や必要に応じて画像検査、心電図検査を実施することで、隠れた疾患を洗い出し、治療を優先することもあります。   

 

② マルチモーダル鎮痛の活用

当院は「マルチモーダル鎮痛」を活用してます。マルチモーダル鎮痛とは、作用の異なる数種類の鎮痛薬を使用することで、相加的・相乗的な鎮痛効果を得る方法です。これにより、各鎮痛薬を低用量で使用しても十分な鎮痛効果が得られるので、薬剤による副作用を軽減できます。また、手術の痛みの程度や動物の基礎疾患の有無に応じて薬剤の組み合わせを変えることでなるべく副作用が起こらないように気を付けています。 特に痛みの強い手術を行う場合は、局所麻酔の併用も行うことで動物の痛みに配慮しています。

 

③ 麻酔管理

麻酔中は心拍数や血圧、体温など体の情報を画面上にモニタリングしています。当院は麻酔担当者を配置することで何か異変があった時にすぐに気付けるようにしています。麻酔中は、麻酔薬の影響や体の水和状態、手術の侵襲等、様々な原因で低体温や低血圧、心拍数の変動などの異常が起こりやすいです。状況に応じて点滴をしたり、昇圧剤を使用したり、必要な処置を行うことで体の中で起こる変動を最小限にするよう心がけています。

 

5.まとめ

当ブログでは全身麻酔のメリットやデメリット、当院での全身麻酔の流れや取り組みについてご説明させて頂きました。

全身麻酔はリスクが伴いますが、全身麻酔に対する適切な事前準備、麻酔中の適切な管理で防げるリスクも沢山あります。全身麻酔をするにあたって、飼い主様も全身麻酔のメリットやデメリット、事前に必要な準備について知って頂けることで、動物病院と飼い主様で協力して全身麻酔のリスクを最小限に出来たらと思います。

 

皆さんがもし全身麻酔に関することでお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談いただけたら幸いです。

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