猫の吸収病巣とは?|猫の歯に起こる恐ろしい病気、吸収病巣について解説2026/07/28

猫の吸収病巣とは?|猫の歯に起こる恐ろしい病気、吸収病巣について解説
愛猫に「最近ドライフードを残すことが増えた」、「口をくちゃくちゃさせている」などの変化はありませんか?
このような変化は、吸収病巣による口の中の激痛が原因かもしれません。
吸収病巣という病気は猫の飼い主様の中でもあまり知られていませんが、猫の歯科疾患としては珍しくない病気です。
今回は猫の吸収病巣について、症状や治療の方法を詳しく解説します。
猫の飼い主様はぜひ最後までこの記事を読んでいただき、愛猫の歯を守りましょう。
猫の吸収病巣ってどんな病気?
吸収病巣とは正式には「破歯細胞性吸収病巣」といい、破歯細胞という自分の歯を溶かしてしまう細胞が異常に働くことで、永久歯が溶けて顎の骨に吸収されてしまう病気です。
猫の吸収病巣は、歯の根元や歯と歯茎の境界部分から溶け始めます。
歯の内部には神経である歯髄が存在し、歯のエナメル質や象牙質という部分に守られていますが、吸収病巣が大きくなり歯髄が剥き出しになると、強烈な痛みが出ます。
歯の一部が溶けることで、歯が脆くなり折れてしまったり抜けてしまうことも少なくありません。
吸収病巣の原因ははっきりとはわかっていませんが、
- ・歯周病による慢性的な炎症
- ・猫特有のウイルス感染症
- ・遺伝的体質
- ・加齢
などが関連していると言われています。
明確な原因がはっきりしないことが多いため、確実な予防法もないのが吸収病巣という病気の特徴です。
猫の吸収病巣は発症率が30〜70%と珍しい病気ではなく、特に4〜6歳の猫で多いと言われています。
また下顎の第三前臼歯で、左右対称に発症しやすい傾向にあります。

吸収病巣の症状
吸収病巣の最も強い症状は「痛み」です。
猫は本来、痛みを感じていても飼い主様にも限界まで隠す動物です。
吸収病巣は、エナメル質や象牙質が溶ける初期の段階では痛みは出ません。
しかし、吸収病巣が進行し神経が露出すると、痛みや違和感が出るようになります。
猫は口腔内に痛みが出ると、
- ・ドライフードの食べ方が変わる
- ・手で引っ掻くなど口周りを気にする
- ・口をくちゃくちゃする
- ・口を触られると怒る
などの仕草が出るようになります。
特に食事の時の様子の変化は比較的わかりやすく、ドライフードを口からこぼすようになったり、首を傾けて片方の歯で食べるようになることも多いです。
ドライフードを歯で砕いて食べるときに痛みが出るため、チュールなどの柔らかい食事を好むようになります。
食事のときの痛みにより、次第に食欲が低下し痩せてしまうこともあります。
また、吸収病巣ではよだれが増えることも多いです。
口腔内の炎症により脳から唾液を分泌するように指令が出るだけでなく、痛みにより飲み込む回数が減るためです。
吸収病巣の診断
吸収病巣の診断は、全身麻酔での口腔内検査と歯科用レントゲンで行います。
猫は、口腔内をじっくり見られたり触られたりすることは嫌がります。
全身麻酔をかけることで、猫にとってもストレスなく安全に口腔内を1本1本丁寧に観察することが可能です。
口腔内検査で表面に存在する吸収病巣を確認したら、次は歯科用レントゲンで歯の内部の吸収病巣を確認します。
歯科用レントゲンでは吸収病巣の部位は、歯に虫が食ったように一部構造が抜けたように見られます。
吸収病巣を見逃さないようにするためには、歯科用レントゲンでしっかり内部まで確認することは非常に重要です。
口腔内検査のみでは35%程度であった吸収病巣の診断率は、歯科用レントゲンを用いることで80%程度になると言われています。
愛猫が吸収病巣と診断されたら
猫が痛みを感じているような様子が見られると、飼い主様は早く治療をしてあげたいと思いますよね。
吸収病巣があると診断された場合、どのような治療法があるのでしょうか。
抜歯手術
猫の吸収病巣の治療には、基本的に抜歯手術が必要になります。
残念ながら溶けてしまったエナメル質や象牙質は再生しません。
そのため、吸収病巣を根本的に解決させるために出来ることは、抜歯手術しかありません。
抜歯手術で吸収病巣ができた歯を除去すれば、その歯については再発の心配もなくなります。
愛猫に抜歯手術をすることになった飼い主様には、「痛みはないのか」「元通りの食生活が送れるのか」などたくさんの不安が出てきますよね。
猫の抜歯手術は、手術直後は痛みがありますがほとんどの場合数日で痛みが軽くなります。
吸収病巣で激しい痛みを感じていた猫が、その痛みから解放されると食事を摂れるようになり、活力が戻ってくることが多いです。
術後数日はウェットフードなどの柔らかい食事に変更し、猫の食いつきを確認しながらいつも通りの食生活に戻していくことができます。
歯冠切除術
歯の根元まで吸収病巣が進行している場合、根元の部分が顎の骨とくっついてしまうことがあります。
これをアンキローシスと言い、この場合は抜歯手術を行うことができません。
アンキローシスになっている場合、歯を途中で切断し、歯冠すなわち歯の歯肉から出ている部分だけを切除する歯冠切除術という選択肢があります。
痛みの原因となっている歯冠を除去したら、歯の骨と同化してしまった部分は体に残して歯茎を縫い合わせます。
通常残った歯の根元部分は、時間経過とともに顎の骨に吸収されていくため問題ありません。
しかし、炎症や感染が起こっている場合には吸収がスムーズにいかないこともあるため注意が必要です。
経過観察
吸収病巣が確認されたのが非常に初期である場合や、抜歯手術を行うリスクが高い場合は経過観察をすることもあります。
吸収病巣が初期の段階で、神経まで影響が出ていなければ痛みの症状がありません。
このような段階で発見された場合は、飼い主様と相談し定期的に歯科用レントゲンで吸収病巣が大きくなっていないか確認し、適切なタイミングで治療を行うという選択をすることもあります。
しかし、ほとんどの場合吸収病巣は大きくなっていくため、最終的には抜歯手術が必要になります。
吸収病巣の早期発見のために
猫の吸収病巣は、確実な予防法があるわけではありませんが、定期的な口腔内のチェックにより重症化を防ぐことができます。
吸収病巣に早く気がつくことができれば、それによる痛みに耐える期間を短くしてあげることが可能です。
吸収病巣に長く耐えている猫は、痛みにより体力を消耗していることがあります。
体力の消耗は、感染症に弱くなったり抜歯手術が大きなストレスになったりする原因になります。
吸収病巣を早期発見することで、なるべく良い状態で治療を行うことができれば回復を早めることが可能です。
そのために、毎日無理のない範囲で愛猫の口腔内を観察するようにしましょう。
飼い主様による毎日の口腔チェックと合わせて、専門家である獣医師による観察も重要です。
1年に1〜2回、ワクチンや健康診断の際に獣医師に口腔内を確認してもらうようにしましょう。

まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は猫の吸収病巣について、詳しく解説しました。
猫の吸収病巣は痛みが非常に強いため、病気が進行するにつれ痩せて活力が低下してしまいます。
しかし早期に発見することができれば、痛みがひどくなる前に対処することができ、また元気に美味しく食事を摂ることができるようになるかもしれません。
飼い主様による日々の入念な観察に加え、専門的な知識のある獣医師による適切な治療が飼い主様と猫の健康的で穏やかな暮らしを守ることを可能にします。
当院では、猫の吸収病巣を含めた歯科疾患の治療を得意とする獣医師が、飼い主様と猫に寄り添った治療を行います。
猫の口腔内のことでご不安のある飼い主様はぜひ当院までご相談ください。
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