カメ・トカゲ・ヘビの病気
爬虫類にも様々な種があり、その種に応じた病気が発生します。入手経路、食餌、飼育環境などを情報をもとに診察方針を検討します。必要に応じ身体検査、皮膚検査、糞便検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査などを実施し、病気を診断します。種類や状態によって、必要な検査やその手技、注意点が異なるため、慎重に判断して実施しています。
消化器疾患(胃腸疾患)
爬虫類は排便が不定期なことも多いので、消化器疾患の疑いがある場合、診察時に糞便をご持参ください。
陸生のカメには、飼育環境の不良、運動不足、飲水不足、食餌の不良などで、食滞(便秘)がよく見られます。細菌、真菌、ウイルス性疾患や内部寄生虫(原虫類、線虫、条虫など)、クリプトスポリジウムによる感染性の下痢や嘔吐、吐出などもカメ・ヘビ・トカゲなど爬虫類にはよく見られる病気です。問診、身体検査、糞便検査、レントゲン検査や必要に応じてPCR検査など特殊検査で診断し、必要に応じて環境や食餌の改善、温浴、輸液や、駆虫剤などを含む投薬で治療します。カメ・ヘビ・トカゲなど爬虫類は、排便が不定期であることも多いため、消化器疾患を疑う場合は、糞便をご持参ください。
皮膚疾患
皮膚感染症の他、脱皮不全など爬虫類独特の皮膚疾患があります。
カメ・ヘビ・トカゲなど爬虫類には、皮膚疾患は比較的よく見られます。
細菌、真菌、外部寄生虫による皮膚感染症もよくみとめられます。皮膚検査や培養検査によって診断し、結果に基づいた、外用薬、内服薬、駆虫薬と投与を行います。環境不良や別の疾患が原因となる免疫力低下が関与している場合も多いため、そのような基礎的原因の有無も同時に確認していくことが大切です。また、同居個体がいる場合、感染が拡大する可能性があるため、隔離や感染の確認が必要な場合があります。
爬虫類は脱皮をする生き物です。湿度不足(乾燥)や脱皮を助ける摩擦物がなかったり不適切であると脱皮不全が起こります。脱皮不全は放置すると元気食欲不振や皮膚感染症や血行不良などを続発することも多いため、早めに対応することが必要です。対応は、環境の改善(加湿など)とともに、温浴は保湿、必要に応じたガーゼなどを用いた脱皮補助が必要です。角膜にもスペクタクルといわれる透明な皮膚が存在する種類もあり、それが残る場合もあるので注意が必要です。(アイキャップ遺残)
栄養障害
爬虫類は栄養代謝が哺乳類などと異なるため、ビタミン不足やカルシウム不足になりやすいです。
カメ・ヘビ・トカゲなど爬虫類は、栄養代謝が哺乳類などと異なるため、食餌の不良や変色によるビタミン不足やカルシウム不足、ビタミンD、カルシウム代謝に必要な紫外線不足により疾患を起こします。
代謝性骨疾患(MBD)は発生頻度の高い病気です。紫外線不足、食餌中のビタミンD、カルシウム不足によって発症します。骨や甲羅の軟化や変形、発育不良、病的骨折などを起こします。
問診による環境、食餌の問題の特定を行います。必要によって、血液検査、レントゲン検査を実施します。食餌の改善、爬虫類用紫外線ライトの確認、サプリメント含むビタミン補給や注射や投薬による治療を行います。ビタミンA不足はカメにハーダー腺炎と呼ばれる特徴的な眼瞼の腫脹や皮膚症状、風邪症状を起こします。ビタミンAを含む食餌への改善が必要です。
ヘビやトカゲに発生する感染性口内炎(マウスロット)、カメに見られる鼻炎なども感染が原因であるものの、その背景には、環境の不良とともに、ビタミン不足が存在することも多いため、感染への治療とともに、ビタミン補充が必要です。
ビタミンAやDは大切なビタミンですが、脂溶性ビタミンであり、その過剰症も問題となるため過剰摂取にも注意が必要です。陸生ガメ見られることの多い膀胱結石も、脱水とともに、カルシウムの過剰摂取が原因であることが多いため注意が必要です。
生殖器疾患
飼育環境によっては適切な産卵場所が確保できずに卵詰まりが起きることがあります。
卵塞(卵詰まり)は、卵が産卵されず、体内に停滞している状態で、産卵場所が不適切などの環境の要因、脱水や栄養不良、異常卵や卵管の疾患、ホルモンの異常など様々な原因で起こります。問診、身体検査、レントゲン検査にて診断し、環境の改善や、点滴や投薬、必要によっては手術にて治療します。努責によって卵管脱を起こすこともあります。オスは陰茎脱を起こしますが、どちらも総排泄孔から脱出するため、直腸脱との鑑別が必要です。